一般的なスポーツや運動と同じように定期的な合気道の稽古は心身ともに明白なプラス効果をもたらしてくれる。持久力、柔軟性、バランス感覚及び調整力が改善され、呼吸、集中力、自尊心あるいは自信が深まる。練習相手間での要な協力及び(友好的な)競争では社交活動の喜びが感じられて、多くの場合長期的な友情関係が築かれる。
合気道はさらに活気に満ちた激しい動きや汗を誘発する稽古と、(愉快な)疲れの楽しさと充実感をもたらしてくれる。集中と努力の向こうで視覚や聴覚がより明確に、嗅覚や味覚がより強く、自分自身と相手と環境の感覚がよりはっきりするようになり、その感覚は実際には直覚的かつ新鮮だとしか言いようがない。それだけでも十分合気道をやっている人の生活の質が向上される。

ところが、他のどのスポーツよりも合気道の稽古によって身に付けられる根本的な心構えは稽古人の人生に大きな影響を与えるだろう。合気道の典型的な稽古を要約すると、それは基本的に二人の練習相手が交互に繰り返し繰り返しお互いを地面に投げ付けることで構成されている。そして、何回地面に投げつけられても、どんなに疲れても、再び立ち上がる。四字熟語で言えば正に「七転八起」ということで、同時に粘り強さと不屈の精神力に繋がる。
練習の度に、あるいは、地面に投げられて、また立ち上がってやると決心する度に稽古人は無意識のうちにこの不屈の精神力を身に付けることができ、稽古のためだけでなく、毎日の生活や人生のためにも役に立つだろう。

(原作: Max Seinsch